第99回 『子どもは病気にかかりやすい』
赤ちゃんは生まれる時、お母さんからおへそを通して、感染に対する免疫(抵抗力)をたくさんもらって生まれてきます。
その目印となる血液中の免疫グロブリン(母親がこれまでにかかった病原ウイルスの抗体を含む)の量は、生まれた直後は母親と同じですが、生後3~6か月で最低となり、病気をもらいやすくなります。
人間が一生のうちにかかる風邪ウイルスは250種以上あると言われていて、子どもが初めての集団生活で多くの感染症にかかるのは仕方がないことです。
前勤務病院のデータですが、15歳以下の小児科救急外来受診患者約3、500人の年齢構成を見てみると、1歳以下:18%、1歳台:19%、2歳台:12%、3歳台:11%、4歳台:8%となっており、5歳までの乳幼児が70%を占めています。子ども(特に乳幼児)が病気にかかりやすいことがよく表れています。
病気(症状)の種類で見てみると、発熱・鼻汁・咳などの風邪症状が約50%、嘔吐・下痢の胃腸炎症状が20%を超え、ともにウイルスによる感染症がほとんどです。
原因ウイルスに対する治療薬はなく、また細菌感染にきく抗生物質の効果は当然期待できず、対症療法が基本となります。
病気を重症化する最大のものは脱水です。子どもの体は大人に比べ水分の割合が高く、発熱により失われる水分量も増加するため、脱水になりやすいのです。
脱水の治療として、病院では重症例に経静脈輸液(点滴)を行いますが、家庭では脱水にならないように水分摂取に努めることが大切です。
また、普段の半分程度のミルクやおかゆ・うどんなどの炭水化物をとることができれば十分です。とれない場合、点滴の内容が水・食塩・ブドウ糖であることを参考にして、口から同様の水分を少量頻回にとる努力が必要です。市販の経口補水液を利用するのもひとつの方法です。
なお、発熱はこわいものではなく、また下げなければならないものではありません。
副院長(小児科部長) 楫野 恭久